「じゃあ、俺について来なさい。呼んだら入って来るように」

校長室で挨拶を済ませた僕は、担任だという教師に連れられて教室の前にやってきた。


「席に着けー」

一足先に教室に入った担任の声が廊下にまで聞こえる。
もう何度目の学校だろうか。
繰り返されるこの光景。

一つの学校とその周辺の調査は半年以内と決めている。
ここも夏には去る予定だ。

「今日から新学期、新学年が始まるんだが、その前に編入生を紹介しよう」

中から担任の呼び声が聞こえると僕はその扉を開けた。

ガラッ

扉を開けるとそこには30人程の顔が並ぶ。
この中にあの少女はいるのだろうか。
願わくば、居て欲しい。

「坂上 冬也(さかがみ とうや)です。」

僕は、一言名前だけを口にした。

「お・・・おう・・・それだけか?」
「はい、いつまで居られるか分からないので、充分です。」
「そ・・・そうか?えっと・・・坂上君は父親の仕事の都合で全国を飛び回っているそうで、このクラスにも、いつまでいられるか分からないそうだ。だが皆、仲良く頼むよ?」

そう、余計な情報など不要なんだ。
全員が僕に注目している。

注目されることには、生まれた時から第一王子として注目されてきたから慣れている。