「トーヤ様!あまり遠くに行ってはなりませぬ!」



僕は、側近の二人を連れて狩りに出ていた。



この頃の僕は、まだ狩りを覚えたばかりで、城下に出ても良い日には、外にでるのが嬉しかった。



狙うのは小さな動物や小鳥ばかりだったし、成功する率も高くはなかったけれど、
それでも充分楽しかった。


森と草原に囲まれたシモンド城とその周囲の街や村は、とても平和で穏やかな国だった。



あの日もいつものように、狩りに出ると僕達は湖の近くまで来ていた。



僕は見つけた動物の後を追う。




あれ?
何か聞こえる?



「ママ~!!」



泣き声?


一瞬、気がそれたせいで動物は見失ってしまった。


僕は獲物を諦め、泣き声のする方へと走った。



木に身を隠しながら様子を見ると、そこには一人の女の子が泣きじゃくる姿があった。



なんでこんな森の中にいるんだろう?
少し様子を眺めていたけど、泣き止もうとしない少女。


「お前、迷子か?」



僕は、思わず声を掛けた。


女の子は、僕の顔を一瞬見つめたかと思うと、更に泣き続ける。