ーコツコツ……
俺は、学校帰りに家の近くにある大学病院に寄った。癖でつい受付をスルーしそうになり、慌てて戻って面会の受付を済ませる。

幼馴染の春は優しかったけど、昔から身体が弱くて入退院を何度も繰り返していた。
よくは分からないけど、辛そうにしているのも見ているし、毎日のように見舞いにも行っていた。

今日も俺は春の見舞いに来ていた。

―コンコン……ガラガラッ

ノックして返事がこないから病室に入ると、春は眠っていた。やることもないから俺はベッドの側にあるパイプ椅子に座って本を読むことにした。よく眠っているから、起こさないようにした……つもりだったんだけど。

―ガタッ

失敗に終わった。
バッグが椅子に当たって、けたたましい音と同時に椅子が倒れ、せっかく眠っていた春を起こしてしまった。

「ん……翔(ショウ)……来てくれたの?ごめんね、寝てた。」
「悪い、起こしたな、春。」
「ううん。来てくれて嬉しい。」

ベッドのリクライニングを立てて、俺と目線を合わせると、春は嬉しそうに笑った。