小さな村の大きな話




「あれは厳しいな…」



あの顔、何度も見てる。
間違いなく、手術は拒否されるな…。



「はぁー…」



チーン

エレベーターを降りて医局に戻る。



「あ、降りるとこ間違えた。ここ、3階じゃん」



そういえば、錦が呼ばれたのって3階だよね…。
空室からのナースコール……。



「いや、なんでちょっと気になってんだよ。僕!!」



……やっぱりなんか気になる。



「もやもやしてても仕方ない!!
確認して帰ってくればいいじゃん!!」



そうして305号室の前にやってきた。

コンコン。

返事はない。
開けて、みるしかないよな…。ここまで来たら


ガラッ!!



「…誰も、いない……」


「そこで、何してる」


「…に、にしき??
ふぅー、びっくりした……。
いや、ナースコールが…。
さっき錦呼ばれていっただろ??」


「あぁ。俺が行ってる間に同意取れたか??」


「あ、えーっと…ははっ…」


「はぁー、人の心配してる場合じゃないだろ」


「うん、ごめん。
えっと、まだ拒否されたわけじゃないんだ。
考えさせて欲しいって」


「いや、ほぼ拒否だろ」


「……ちゃんと説得するよ」



そのまま二人で医局に戻る。
なんか、不思議な気分だ。何か触れちゃいけないものに触れてしまったのだろうか。