小さな村の大きな話



【大和side】

……最近おかしい。
軽度から重度まで頻繁に発作を起こしてる。

熱もないし発作が起こるような事は何もしてない。
検査結果も全部明らかに悪い。
村は自然豊かで気候も比較的穏やかだったから最近は随分落ち着いていたのに。



「どうした、壱」


「錦…。いや、なんでも」



スルッと資料を取り上げるとうーん、と考え込んでいる。



「これ、りんのか…。
……また随分ひどい数値だな」


「ちょ、勝手に――」


「一人で考えてると煮詰まるぞ」


「うっ」


「レントゲンは??」


「これ……」



封筒から取り出し手渡す。



「……これなら完治は見込めないが手術で随分症状が落ち着くはずだ」


「え??」



錦がレントゲンをプリントアウトして持ってきた。



「こことここを切除して、ここをそこと縫合。
ここはカテを使えば何とかなる」


「……それでここをこうすれば…。
いや、でもこんなに上手くいくか??」


「別に大丈夫だろ。不安要素をあげてけ。1つずつ潰していけばいい」


「流石、主席様は頼りになる……」


「そういうお前は2位だっただろうが」


「…知ってたの??」


「そりゃ、毎日抜かされないかって必死だったからな」


「え??意外だ。
順位なんて関係ない、とか自分が一番で当たり前、みたいな顔してたくせに」


「そんなわけあるか。
毎日どれだけ勉強したと思ってる。
俺は学費なんて払えなかったから順位が落ちたら退学だったんだぞ??」


「知らなかった…」


「言ってなかったからな。
まぁ、養父は結構甘い人だったし、いざとなれば学費は出してくれただろうけど。
俺が甘えたくなかったんだ。
向こうもその気持ちを汲んで勉強も教えてくれたし。合間を縫って実技も見てくれた」


「そうなんだ…」



ブーブー



「佐伯先生!!305の患者さんからナースコールです」


「わかった、すぐ行く。壱、早めに同意取っておけよ??」


「あ、うん、ありがとう」



珍しい、だいたいナースコールって言ったら名前で呼ぶだろ…。
○○さん、ナースコールです。って。
相部屋だったら部屋番号だけじゃわからないし。
それに、一瞬だけど錦が焦った顔した。

不意に壁にある部屋の一覧を見た。



「あ、れ…??」



305号室は空室と札がかけてあった。