「あれ、ペンケースがない」


お手洗いから帰ってきたらペンケースがなくなってた。


クスクス…


…多分、あの子達だ。
騒いでも仕方ないか…確かカバンのポケットに予備があったはず。


ペンケースは案外わかりやすいところにあった。
教えてくれた子がいたからだ。


「ごめんなさい、本田さん。私この後どうしても抜けられない用事があるの。掃除当番代わってくれないかな」

「え…うん、わかった」

「本当に、ごめんね。
掃除道具はロッカーに入ってるから」


掃除当番変わるくらいでそんなに申し訳なさそうにしなくてもいいのに。


「わかったよ、大丈夫だから」

「本当に、本当にごめんね…
こんなことしか出来なくて」


消え入りそうな声でそう言うとそそくさと帰っていった。


「とりあえず掃除しよう」


本当はペンケース探したかったけどまぁ、仕方ないか。


「…あった」


掃除ロッカーの中に。
ペンケースが。
…あの子、知ってたんだ。
確かにみんなの前で助ける訳にはいかないもんね。
見つかったばかりのペンケースと、メモ帳を出して手紙を書いてその子の机の中の教科書に挟んだ。