このままではキスだけで終われない気がして、キスを止めた。

唯の心が俺のモノになるまで、もっと深く濃密なキスは、次回までお預け…

我慢している俺の前で、百面相をしてたかと思えば、トロンとした眼をして見つめていたくせに、あんな男に義理立てして素直にならない。

だから…唯の心を揺さぶり、心の隙間に入り込む。

「唯を誰にも渡したくない。お前が好きなんだ」

唯に俺の気持ちを伝えた‥今はまだそれだけでいい…

チャンスは、これからまだあるのだから…

「そんなわけない。キスしてほしいなんて思ってないから…」

ヘェ〜
可愛くない事を言う。

それなら、キスしたくなるように仕向けるまでだ…とほくそ笑んだ。

それから、唯を家に帰るよう促して俺は慧の部屋になっている店の外階段を上って行くと、女とキスしている慧がいた。

タイミングが悪かった気不味さに

「悪い…出直す」

引き返そうとしたら

「新、帰らなくていいよ。さぁ、キスしたんだから帰えれ」

女の肩を押し、俺に顎で入れと促し部屋の中に入っていく慧。

階段を駆け下りていく女の目には涙が流れていた。

ここにも、酷い男が1人…思わず笑ってしまった。