口を閉ざしてしまった。
「どうも…俺のことじゃないみたいだな」
どうしよう…
拓真とのことをだなんて言えない雰囲気に、新ちゃんの鋭い視線から目をそらし、言い訳を探す。
どうして言い訳する必要があるの?
ふと、そんな事が脳裏をよぎった時、手の拘束が解けて新ちゃんに抱きしめられていた。
「どうしたら俺だけのことを考えてくれる?」
甘やかな言葉が切ない声で耳元をくすぐる。
キュンとして、体の芯が溶けてしまったかのように力が抜けて、新ちゃんの胸にすがりつく。
「ゆい、答えて?」
私の体を支えながら、耳元で新ちゃんが囁く。
「…わたし‥には、…たく、まが…」
「俺以外の男の名前なんて聞きたくないね」
怒りを含んだ声の持ち主は、私を見下ろし険しい表情をする。
その中に、切なく私を見つめる瞳に心を鷲掴みされたようにズキッと痛む…
その瞳に誘われ間違った事を言ってしまいそうで、目をそらした。
すると、腹立たし気に耳朶を噛んできて、そこに触れる唇の熱に身震いが起こった。
「痛い……やっ…ダメ…」
どこから出たのかわからない艶めかしい声に驚いて、恥ずかしさに目が潤む。



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