1人で戻ってきた俺にまさふみは驚きながらも、無言で椅子に座った俺の前で愛用のグラスにウィスキーを注ぐ。

液体に注がれたアイスボールがグラスの中で音を立てた。

グラスを持ち、氷を見つめながら琥珀色の液体をグラスの中で回すだけで飲もうとしない俺にまさふみが話しかけてきた。

「さっきまでご機嫌だった奴が、そんな不機嫌そうな顔をして戻って来て、どうしたんだ?」

「フッ…不機嫌か⁈まぁ、面白くはない」

なんのことだ?と首を傾げるまさふみに俺は笑った。

面白くないが、面白い…

そんな笑いにまさふみは怪訝な表情を浮かべた。

自分で薦めた事だが、今、唯とあの男が2人きりでいる事が面白くない。

男の浮気現場に遭遇し、唯がかわいそうだが俺としては面白い。

浮気の疑惑がグレーから黒だとはっきりした以上、2人の関係にヒビが入った。

その隙間に、どう上手く入り込めるかが重要で、唯に俺の存在を意識させる為の行動を起こす。

キスして

好きだと告白する。

例え、唯が困惑しようとそれをやめるつもりはない。

彼女がこの手に戻ってくるまで、心を乱し、思わせぶりな態度で誘惑し惑わせる。

俺を好きだと認めるまで…