隣のAliceの営業が終わる頃に俺は店に顔を出した。

もちろん、その理由は唯と過ごしたいからで…

試飲と言う言い訳を用意して、声をかける。

お袋が、この後親父の店を手伝いに行くのはわかっていたから、唯に頼むだろうと見越して尋ねてみた。

予想通り、お袋は唯に任せて早々に親父の店へ向かった。

唯を誘う事に成功し、彼女が着替えを済ませてる間に店に戻った俺は、取り引き相手にメールを送った。

『予定通りの時間に、店の前にいる』

しばらくして

『こちらも予定通りの時間に店に向かいます』

と、返信がきて俺は1人密かに笑った。

その時、なんの疑いもしない唯が裏口から入って来て、カウンターに座るようすすめる。

もちろんそれは、彼女に近い距離で俺を意識してもらう為で、試飲なんて必要ないのにコーヒーを出した俺は、唯からケーキの箱をとり、彼女の大好きないちごのショートケーキを出してあげる事も忘れない。

嬉しそうにケーキを口の中に頬張り、美味しそうに頬を緩ませている彼女の表情に俺も笑みが漏れる。

かわいい…
口の端に生クリームをつけているのにも気がつかない姿に昔を思い出す。