女は常連客となり、月に2、3回のペースで来るようになった。

彼女から唯の彼氏がどんな奴なのか聞き出そうと世間話から仕事の愚痴に付き合ってやれば、懐かれたようで心の警戒を解くことに成功し、いつの間にか彼女を絵里さんと呼ぶようになり、プライベートの事も話してくれる仲にまでなっていた。

そして、今、絵里さんから彼女がいる男を好きになってしまったが諦められないという告白に、今までの会話の内容で誰の事かピーンときた。

彼女が来店する時は、唯とあいつが会っている日だったから1人でいたくなかったと言う。

更に、話を聞けば彼女持ちだとわかっていながら体の関係を持ってしまったとの懺悔するような告白に、俺の怒りは唯の存在を知っていた目の前の女より、唯を裏切った男に向いた。

その告白は、唯を諦められない気持ちに火をつけてくれる。

今までカウンターの反対側で相づちをうつ聞き役だけだった俺が、カウンターに客が絵里さんだけだということもあって初めて自分の思いを呟いた。

「そんなに好きなら奪っちゃえば…」

思いもしない俺のつぶやきに目を見開く彼女は、しばらくして諦めの表情で呟く。

「彼に言われたの。彼女いるから割り切った関係だよねって」