枕を挟んでヘッドボードに背を預けていると、気だるそうにしながら仔猫のようにすり寄ってくる唯の仕草に笑みがこぼれた。

「…大すき」

照れながら頬を染め、上目遣いに見上げる表情は、とても可愛らしくて彼女の頭を撫でた。

「…俺の好きは唯より大きいよ」

ガッガリした表情で

「私も負けないぐらい好きだもん…」

視線を逸らして尖らせた唇は、唯が拗ねた時の癖だ。

ご機嫌が斜めになったらしい。

わざと、唯の欲しい言葉を言わなかったのは、俺のちょっとした意地悪心からだった。

「唇尖らせてどうした?」

尖った唇に人差し指の指先を何度も当てて、からかうと、更に尖っていく唇。

「尖ってない」

今度は、頬を膨らませて背を向けてしまった。

シーツの上で、のの字を書く唯が可愛らしくて意地悪し過ぎたと反省した俺は、背後から唯をそっと抱きしめた。

そして、のの字を書いていた右手を包むように握りシーツの上に字を書いた。

彼女が欲しかった言葉

『すきだよ』

指先を追いかけ、なんて書いたのか理解した唯の頬が、真っ赤になっていく。

「…もう…もう、…ずるい。口で言ってよ」

抱きしめた腕の中で、照れ隠しに暴れ出した唯をベッドに貼り付けた。