「…おはようじゃないよ。朝から…」

「朝から…なに?」

隣の美鈴さんが気になって口ごもっているとわかっているくせに、人の頭を撫でながら意地悪な笑みを浮かべ聞き返す男に殺意が湧く。

だから、キスされた事は流して話を誤魔化した。

「難しい顔をしていたけど、どうしたの?」

「あぁ、お袋のせいだよ」

「美鈴さんのせい?」

「オープン記念って言って、勝手にコーヒーの無料券って物を作ってコンフォルトの馴染みの客に配りまくったらしいんだ」

「えっ…」

相変わらず思い切った行動力を見せる美鈴さんに驚きで声が続かない。

「どうするの?」

「どれだけその券を持って客が来るかわからないから、とりあえずそれ専用に豆はこれを使って、セット用のコーヒーもこの豆を使う。後、もう一台マシーンを置く事にしたよ」

仕方ないというように、肩を竦めながら右の口角を上げ苦笑いする彼は、先ほどまで美鈴さんの無茶振りが続き頭を抱えていたのだろう…

なんだか美鈴さんに振り回されてかわいそうに思えて、思わず、目の前の男の頭を撫でてしまっていた。

驚いた表情した新ちゃんだったけど、それは一瞬で…
妖しい笑みに変わった。