もう、手遅れだけどな…

男の最後の悪あがきに、優しい唯は別れを言えない。

いや、奴の言葉に傷ついて、傷つけた罪悪感に何も言えなかったんだ。

奴なりに唯の事を理解して揺さぶった言葉だったらしいが、今、唯の側に誰がいるか忘れているらしい。

「…浮気は浮気だ。浮気していい理由にならない。俺があいつの立場なら、他の女に逃げないで唯の気持ちを掴む努力をするね」

唯にあいつへの罪悪感なんて持たせてたまるか…

「……『俺は誰かの代わり』ってあいつが言ってた誰かって誰のことなんだろうな?」

思わせぶりに囁き、彼女を抱きしめ俺を意識させる。

ゆい…わかってるんだろう⁈

心のまま正直になれば楽になるのに…

「…わ…からない。でも、それでも私といたいと言ってくれる拓真の事、ちゃんと考えなくっちゃ…」

答えはもう出ているくせに、なぜ考える必要があるんだ?

「考えても答えは同じだろ…時間を引き延ばすだけ余計にあいつを傷つけるだけじゃないのか⁈」

「…でも、拓真の気持ちを考えたら別れるなんて簡単に言えない」

そんなの偽善だよ…

別れを簡単に言えないなら…俺がその言い訳になってやる。