「お先に失礼します」

「お疲れさま…唯ちゃん、そんなにオシャレしてデート?」

「えへへ、そうなんです」

「楽しんでらっしゃい…」

「はーい」

笑顔で、裏口から駆け出した。

私の勤めるケーキ屋【Alice】は、幼馴染の新ちゃんのママ、美鈴さんのお店。


うちのママと違ってお菓子作りが大好きで、旦那様のお店【コンフォルト】で数量限定でケーキを出していたのだが、趣味のお菓子作りが高じて40才を過ぎてからパティシエの専門学校に通い、4年前にオープンしたお店。

当時、大学に通いながら私はパパのお店【フォルテシモ】を手伝っていた。就職先も難しく、このままここで働くのもいいかなぁと思っていたところ、美鈴さんがお店を出すと聞いて就職先はそこしかないと決めたのは、小さな頃から美鈴さんの作るお菓子が大好きだったからという単純な理由。

オープンと同時に、私のアルバイト先はフォルテシモからAliceに変わり、そのまま従業員として就職した。

パパは、あまりいい顔はしなかったけど、ママが美鈴さんのお店なら安心とパパを説得してくれたのだ。

まぁ、フォルテシモの跡継ぎは双子の兄、慧がいるから大丈夫。おじいちゃんの元でシェフ見習いとして頑張っている。