「まだ、手をこまねいているのか? おまえは、いつも奥手で、女もちっとも落とせないんだな…」

軽く口の端で笑うのに、

「……落とすだなど」

と、顔をうつむける。

「…目を、そらすな。その様子じゃ、まだ抱いてもいないのか?」

答えずにもいると、

「…ふん、いつまでも何もしないでいるのなら、僕が奪ってやってもいいんだぞ? あの時みたいに…」

「…えっ! それは…!」

思わず顔を上げると、

「…ふっ、クッ!」

と、春夏は喉の奥で笑って、

「…嘘だ。そんなこと、もうするわけがないだろう? おまえの相手に手を出す程、僕は女に困ってはいない」

言って、ゴクリとワインを飲んだ。