「…あの、秋冬さんは、どうしてあのお店で働いていて…?」

ふと疑問に思っていたのを尋ねてみる。

「ああ…兄がオーナーの店でなど、どうしてと思いますよね?」

と、小さく笑って、

「……僕は、弟なので、鷺宮の家にはあまり関わりもないので。だから、どこで働いていようとも別に……」

少し悲しげにも聞こえる口ぶりで、そう話した。

「……同じ双子なのに、何が違うんですか?」

訊くと、

「……双子でも、先に生まれた方が兄であるのに変わりはないので 。……兄がいれば、僕は必要ないのと同じなので……」

「必要ないだなんて、そんな……」

「鷺宮の総帥は、一人いればいいので……同じ顔は、二つもいらないってことなんです」

言って、

「僕は、弟というだけで、兄とは扱いも全く違っていて……」

と、グラスの水を一息に飲み干した。


「……私は、秋冬さんの方が、上に立つ人として似つかわしくも思えるけど……」

そう伝えると、

「ありがとうございます」

と、彼は微笑を浮かべて、

「……でも、長男である兄の春夏が跡を継ぐことは、もう決まっているので」

答えて、

「……この話は、これで終わりに……」

と、それ以上はその話をすることは、もうなかった……。