「ご乗車ありがとうございます」


いつもの決まり台詞が響いたホーム電車はいつもここで終わる。
昼間は暖かかったのに夜は急に冷え込む。

まるで、隣からキミが消えたあの日を思い出させるように。

人はいつも誰かを思い誰かに思われまた今日の雑踏の中を歩いていく。
例え、思ってる人が付き合っている人じゃなくても誰かを頭の中に思い浮かべている。

そう、あの日から時間がた経った今でも僕の頭の中にキミがいるように。

キミの頭の中に僕がいないことに気付いてるけど
それでも君が隣にいた確かな記憶が僕の頭の中から消えないことが
僕に毎日幸せを作っていく。

それがたとえ心が泣いていることだとしても。

キミに話したいことがあるんだ。
心の中でキミに二度と届くはずもない言葉でキミに話しかけながら改札を出た。

次はチャージしてからじゃないと僕は電車に乗ることすら許されないようだ。

駅から家までは30分くらい歩く。
僕の景色がまた独りぼっちのになった時から帰り道も行くときも楽しくはなくなったけれど
でも、帰り道はキミがいた思い出を探しながら帰ることが少し…暖かくも思えた。


今日はこっちは晴天です。

でも寒い分だけ星が綺麗なのだと思います

キミも知ってるこの道に星が好きな僕は街頭がなくてよかったと思います。

今日はシリウスを見つけました。キミが1番好きな星を見つけました。

そうだ、キミに話したいことがあったんだ。

キミがずっと心待ちにしていたカフェがね、あの駅前の大きな空き地にできました。

狭くもなく少し広いくらい、地下もある3階建てのカフェができました。

外から見てると蠟燭のような優しい光が窓からこぼれていて笑い声が想像できます

結構人気らしくって僕はそこの面接に受かって社員になりました。

夜は1人で営業しなくちゃいけないらしく僕は少し心細いです。

でも君の好きなもの用意しておくから…



僕は立ち止まった。
こんなにも綺麗に星が見えるのにその星空を無理ことすらできなかった。

僕を置いて周りは進んでいくんだ。
僕なんかいなくったって…周りは平気な顔して進んでいく。

何万といる人間の中僕は1にしか過ぎない。
ましてや輝いているわけでもなく。

唯一僕の見方だったキミですら消えた。
こんな僕に残っているものはアコギと寂しい部屋だけだった。

もっと有名になったら僕の隣から離れないんじゃないかって思った。
キミの好きなカフェに就職してしまえばキミはもっと好きでいてくれると思った。

キミの好きな甘いものと
それにマッチするくらいのほんの少しのビターなコーヒーを
キミが求める前に用意できたら…キミはずっと幸せだって君の笑う顔が見れるような気がしていたんだ。

でもそれは違ったんだ。
最終的に言われた言葉は

「類は、私を見ているんじゃないうよね…ただ自分に酔っているだけなんだよ」

って現実を叩きつけられた。

25にもなって長年付き添ってきたキミを失ったことでもうなにも見えなくて
もう…前に進める気がしなかった。

こんなことを考えて静かな部屋に鍵の音が響いた。

「ただいま」

試しに言ってみても迎えてくれるのは毎日飲むビールと
高校の時からのずっと相方のアコギだけだった。

ただ今日キミに言いたかったことはこれじゃなくて…
多分本音はキミにまた振り向いてもらいたいって気持ちだけど

今回はそうじゃなくて
この変り映えのない毎日にピリオドを打つために決めたことがあるんだ。

それをキミに伝えようとしたんだけど…やっぱりやめておくよ…。