桜ノ蕾



そして次は殿の前に座っている陶さんへ。



「また会いましたね。蕾殿」

「そうですね」


何とも言えない空気が漂う。


「ライと会ったのか?晴賢」

「ええ、先程お会い致しまして」


そして陶さんはチラリと私の方を見る。


「蕾殿は大変麗しい方ですな。噂通りのお方で私も目を奪われましたよ」




う、麗しい?!
何言ってるこの人!
さっきは子供だとか残念だとか散々言ってたくせにさ!!



殿に見えないようにキッと睨んだが陶さんは全く気にしてないように流されてしまう。


「ははっ、麗しいとはライには似合わぬ言葉だな」


殿はそんな私たちのことなんて気づいてないように陽気に笑った。


「はぁ?!」


思わず間抜けな声が出てしまった。



そこはせめて少しでもフォローをするところでしょ。
明らかに陶さんは嫌みで私をそう言ったと分かるだろう。

それを分かった上でのこの態度とか?



そんな風に考えてみたが、殿はケラケラ笑いながら民部君にまで同意を求めている。


分かってるんだかどうなんだか……



彼が何を考えているのか全く分からない。