「ライは髪をまとめないのか?」
私の悩みなんて全く気づいていないであろう殿は髪を指に絡めて遊んでいる。
「仕事の時に邪魔になるだろう」
「そりゃまぁ……」
そういえば小夜ちゃんにもくくらないのかって聞かれたな。
そのときはまだ肩についたぐらいの時だったからいいって言ったんだっけ。
「でも結ぶにしても何も持ってないから出来ないのよ」
小夜ちゃんに頼めば貰えそうだけどあの子は自分の分まで全部渡してきそうだからちょっと遠慮したい。
「それにまだ長いって程じゃないし」
ハハハと笑ったけど殿は一緒に笑ってくれず、何か考えているような表情を浮かべた。
「どうしたの?」
「ん? いや、何でもない」
「そう?」
殿は直ぐに笑って私の髪をまた触りだした。
そんな彼の行動に少し疑問を感じたがそんなことは直ぐに忘れてしまった。
それからこの話題が出ることはなかった。
