ゆっくりと目を開けるとすっかり見慣れた木の天井があった。


そっか、私また殿に助けてもらったんだ。




ふと額に冷たい何かが置かれた。


「目が覚めたか」


顔を横に向けると殿が優しい笑顔を浮かべて私の額に手を乗せていた。


「気分はどうだ?」


返事をしようとしたけど上手く声が出ず首を縦に振った。


「そうか……」


そう言って彼は私の額を撫でた。

その手の体温が心地良くて私は目を細める。
熱があるのかな、なんて呑気に考えていると撫でていた手がピタリと止まった。

不思議に思って目を開けると、彼は顔を歪めて膝に置かれた拳を強く握った。


「すまぬ」


その言葉に私は目を見開いた。

どうして殿が謝るの?


「すまぬ、ライ」


もう一度言って彼は額から手を離そうとした。
私は慌ててその手を両手で掴んだ。


「どうして謝るの?」


少し掠れた声で聞くと、一層彼の眉間の皺が深くなった。


「ライを危険にさらしてしまった」

「それは殿のせいじゃないでしょ?」

「いや、私が目を離さなければこんな事には……」


殿はそこで言葉を切ってうつ向いてしまった。






どうしよう。

こんなときにこんなこと思うなんて不謹慎なのに。