真っ赤になりながら叫んだ私に、彼は「あぁ」と呟いた。


「何を焦っているのだ。口づけぐらい大したことではないだろう」

「は?」



私は殿を見たまま唖然とした。

大したことないって言ったの、今?
じゃあこの前私のファーストキスを奪ったのも“大したことない”ことだったの?



「どうしたというのだ」



私の頬に触れようとした彼の手を振り払う。



「何? じゃあ貴方は誰としたって大したことじゃないの?」


怒りが沸々と沸き上がってくる。
何だか分からないけどイライラする。


「何を言っている」


彼は眉を歪めて怪訝そうな顔をしている。


「こんなこと平気で誰にでも出来るのかって聞いてるの!!」

「そんなこと当たり前だろう? 皆そういうものではないのか」


彼との間に時代の壁を感じる。
やっぱりここの人と私は違うんだ。







「当たり前なわけないわ! 初めてのキスは好きな人としたかったのにっ」


ポロポロと涙が溢れてくる。



ずっと好きな人とキスをすることが夢だった。
ちゃんと好きな人と……





なのにこんな訳の分からないところで最低の男としたなんて……





立ち上がり、驚いて私を見ている彼を睨み付けた。






「やっぱり 最低」





それだけ言って私は走ってこの場から離れた。