「私は所詮飾り物の当主でしかないからな……」

「飾り物……?」



秀も同じような事を言っていた気がする。




一体どういう意味なんだろう。
それに、何でこんなに悲しそうな顔をするの?
何だか彼は凄く大きな何かを抱えているように思えた。


黙ったまま見つめていると、殿はにやっと意地悪く笑った。


「まぁ、こうやって誰にも知られずにこうやって過ごすのも悪くない」


そう言って彼はグッと顔を近づけてきた。





ヤバイ、キスされる……。






そう本能的に感じた私はとっさに後ろへ下がろうとした。










ガツンっっっ!!!








盛大な音が鳴り響く。


私は思いっきり後ろに倒れてしまい、木の根っこの所で頭を打った。



「いっつぅぅぅ」



あぁ、今ので数少ない私の脳細胞が死んでいく……



「大丈夫か?」


原因をつくった本人は呆れた顔で私を見ている。

誰のせいでっ!!




「な、何またキスしようとしてるのよ!」

「キス?」


もう! 何で通じないのよっ。


「口づけよ口づけ!」


うぅぅ、こんなこと男の人に言うなんて乙女にあるまじき行為だ。


もうお嫁に行けないかも……