「あいつ何処にいるのよっ」
洗濯を終えて私は長い廊下を歩いている。
小夜ちゃんの話を聞いてあいつに謝ろうと決めたはいいが全然見つからない。
小夜ちゃんも分からないと言っていた。
「あー、あの曲がり角から出てきたらいいのになぁ」
それは都合良すぎだよね。
なんて考えながら曲がり角を曲がろうとした。
「おっと」
「わわっ!」
曲がり角で人とぶつかりそうになった。
本当に人が来るとは思ってなかったからビックリだ。
「す、すみません」
「いえ。こちらこそ」
あいつの声じゃない。
顔を上げて相手を見てみる。
「あ!貴方あのときの」
「あぁ、確か御屋形様が助けられた」
目の前にいたのはこの前殿にぶつかったとき隣にいた男の子だった。
確か民部君だったかな。
「もう大丈夫なんですか?」
「はい、おかげさまですっかり。民部……くん?」
「自己紹介がまだでしたね。私は御屋形様の小姓をしております杉 民部と申します」
「さく、蕾と申します」
「ええ、御屋形様から聞いております」
そう言って民部君は子供みたいな可愛らしい笑顔を浮かべる。
ああ、どっかの誰かさんとは大違いだ。
あ、小姓っていうのならもしかしたら居場所を知っているんじゃ!
「ねぇ! 民部君はあい……殿が今何処にいるのかわかる?」
「御屋形様ですか?」
こくりと頷くと、民部君は顎に手を当てて悩み始めた。
「確実ではありませんが、心当たりならばあります」
「ほんと?!」
「はい」
心当たりを教えてもらって民部君と別れる。
小姓って一番近くにいる人だよね?
そんな人でも居場所が分からないなんて……
大丈夫なのかな?
