桜ノ蕾




諦めかけたとき。




「だが、お主が着ていた服は奇妙なものだったな」


彼がそう言ったのを聞いて、バッと顔を上げた。


「そうでしょ! あれは私がいたところの普段着なの」

「あのような足を出した服が?」


いや、どこ見てたのよ。


と、いつもなら突っ込むところだけど、今の私はそんなことどうでもよかった。


「そう! あれは制服って言って私ぐらいの子が着る服なの!」

「お主のいたところでは諱はなかったのか?」

「なかったわ。諱なんて聞いたこともなかった」

「そうか……」


そう言って彼は考え込んだ。


「言ったことは全て真実か?」


頷く。

彼は私をじっと見てからひとつ溜め息をついた。


「そうか……」

「信じて、くれるの?」

「未来から来たというのは信じられんが、確かにお主は妙だからな。だがやはりお主を元の時代に返す方法は知らぬ」

「そう……」



俯くと頭にポンと手をおかれた。


「すまぬな」


おかれた手は温かく感じ、涙が溢れてきた。


「ううっ、ひっく……」


泣き出した私を、彼はただ黙っていた。






私は本当に元の時代に帰れるのだろうか。



そんな不安が全部涙に変わって、私はただただ泣き続けた。