「見ぬ顔だな。どこの男児だ?」
言われた言葉に放心状態だった私は目をぱちくりさせた。
だんじって男ってことよね。
この人、私を男って言ったわけ?!
「だ、誰が男よ!!」
さっきまでの気持ちはどこへやら。
私は完全に喧嘩腰になっていた。
「おなごなのか? それにしては髪が短いしひどく平らでは……」
「なっっ!!」
人が一番の気にしていることをっ!!
「御屋形様」
この男ではない声が聞こえて、彼の隣を見ると私と同じ位の男の子がいた。
目の前の男に気をとられ過ぎて全く気づかなかった。
「何だ民部みんぶ」
民部と呼ばれた男の子は私をチラリと見て、また彼の方へ視線を戻す。
「先日助けた者では? 目が覚めたと女が噂しているのを聞きました」
「あぁ、あのときの子供か」
私を残して納得している二人にイラッとしてもう一度口を開こうとしたとき。
「さ、桜様! やっと追い付きました」
後ろから息を切らせた小夜ちゃんが走ってきた。
「さぁ部屋に帰りま…って殿! いらしたのですか?!」
男の存在気づいた小夜ちゃんは慌てて深々と頭を下げた。