「えっと、つかぬことをお伺いしますが、今は何年でしょうか?」
「確か…天文23年の弥生です」
聞いたことのない年号。
でも『やよい』は知ってる。確か昔の言い方で3月の事だったはずだ。
どういうこと? 私がさっきまでいたのは9月だったはず。
なのにどうして4ヶ月も時間がたってるの?
しかもかなりの薄着なのに全く寒くない。
ハッとして、毛布から飛び出す。
小夜ちゃんが止めた気がしたけど今はそれどころじゃない。
閉じられた障子に駆け寄り、それを勢いよく開け放つ。
「どういうことなの……」
外に広がっていたのは桃色の花をいっぱいに咲かせた木々たちだった。
私はバカみたいに口を開けたまま立ち尽くす。
9月にも3月にも桜が咲いているわけがない。
なのにどうして咲いてるの?
何もかもが私が今まで生きてきたところと違う。
