桜ノ蕾



んー……まぁ騒いでも仕方ないっちゃ仕方ない。私は1度大きく深呼吸して、元の場所に座り直した。


「取り乱してごめんなさい。えっと、小夜ちゃん?」

「いいえ、大丈夫ですよ」


微笑んでくれた小夜ちゃんを見てほっと胸を撫で下ろした。


落ち着いて小夜ちゃんをもう一度よく見てみる。

彼女が着ているのは若い子がめったい着ることのない着物。
でも、私が知っている着物よりも地味で帯が凄く短い。


「小夜ちゃん、その服って……」

「服? 小袖(こそで)のことですか? 別に特に変わったものではありませんが」


学校の授業で聞いたことのある名前だ。

そんなものを日常的に着てるなんてありえる?
若い人が着てるのなんて滅多に見たことない。
小夜ちゃんは私と同じ10代だろう。


「そういえば、桜様は不思議な着物を着ていましたね。外国の方ではないかと皆で話していたんですよ」

「不思議? 制服のこと?」

「あれはせいふくと言うのですか」

「え、当たり前じゃん」

「そうですか? 私は初めて見たのですが……」

「「……」」


話が全く噛み合っていない気がする。

小夜ちゃんの歳で制服を知らないなんて有り得るの?


でも彼女の顔は冗談を言っているようには見えない。


何だか段々と不安になってきた。