狂い咲き……
肌寒い風が吹く中、桃色の花を見事に咲かせる木の前私は足を止めた。
9月。
周りの木々は青々とした葉をつけているのに、この1本だけは全身を桃色に染めている。
観光客も珍しいこの木に心奪われ花を見上げていた。
美しい桜はとても楽しそうに咲いているように見える。
なのに何でこんなに泣きそうになるんだろう。
どこか懐かしい、それでいて凄く切ない……
そんな不思議な感情が込み上げてきた。
『桜を見ると寂しくなる』
そんなことを何処かで聞いたことがある。
だからなのかな。
それとも昨日見たあの夢のせいなんだろうか。
私が桜の木の前にいる夢。
誰かが隣にいた気がするのだが、全く思い出せない。
でも起きたときに私は泣いていた。
ため息をつき私はその場を離れた。
そろそろ行かないとみんなとはぐれてしまう。