桜ノ蕾


「あ、目が覚めましたか?」


目を開けるとそこにあったのは小夜子の顔。

あまりの近さに悲鳴を上げそうになった。


「良かった、なかなか目が覚めなかったので心配していたんです」


何か言葉使いが違うような……

まじまじと見てみるが顔は小夜子そのもの。
でも髪は黒いストレートで一つに結っている。


「あの、大丈夫ですか?」

「へ?」


完全に自分の世界に入っていたので、間抜けな声が出てしまった。


「だ、大丈夫大丈夫!」

「そうですか」


ニッコリ笑った彼女の顔はやっぱり小夜子。


「えっと、ちなみに貴方のお名前は?」

「あ、すみません自己紹介がまだでしたね。小夜さよと申します。貴方様は?」

「桜です。村上桜」

「桜様ですか」


小夜さんはそう言うと笑って頭を下げた。
私も慌てて同じように頭を下げる。


頭を上げて改めて周りを見回すと、田舎のおばあちゃんの家のような部屋。
でも修学旅行の宿は和式じゃなかったはず。



「倒れていた貴方を助けて下さったのは殿なんですよ」

「殿?」


21世紀のこの時代、殿何て呼ばれてる人が存在するのだろうか。

変わった名前とか?

有名キャラクターの名前とか子供に付ける人とかいるわけだし。


「こちらに運び込まれてから3日間目が覚めなかったので心配していたんです」

「3日間?!」


道理で体が重いわけだ。


「熱があったので勝手ながら私が着替えさせていただきました」


自分を見下ろしてみると、真っ白な着物を着ていた。
それは時代劇とかでよく見るようなもの。


ん?


何だかん違和感を感じて服の袖をつまんで中を覗いてみた。





「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」



あまりの衝撃に体のだるさも忘れて飛び起きた。