ヒラヒラと桜が舞う。


隣を見ると男が桜を見上げていた。


彼は私の視線に気づいてこちらを向く。
微笑んだその顔には、優しさと悲しみを浮かべていた。

私も顔をほころばせ、彼の頬へと手を伸ばす。



指先が頬に触れた瞬間、彼は花びらとなって舞い散った。



どんなに周りを探しても、声を枯らして名前を呼んでも、彼はもう何処にもいない。

指先に微かに残った感触もだんだんと消えてゆく。



私はその場に座り込み、声を出さずに泣いた。



今、貴方はどこにいるの?


何で私の隣にいないの?