「騙してたのかよ。」
「違う、私も知らなかったの!縁が切れるなんて」

「ふざけんなよ!俺がどんだけ我慢したと思ってんだよ」
「…ごめ」



「お前なんか大嫌いだったよ」

待って、壱。
ごめんなさい。

ごめんなさい…



ピピピッ
聞きなれたアラームの音。


…夢。
体を起こして、頬を伝う涙を拭う。



「はよ、蒼依」
「…」
「…?どした?」
「何でもない。」

隣でしゃべってる壱を盗み見る。

もし、縁が切れることを知ったら。
夢みたいになるのかな。

あの日から。

目が、怖い。

どんな目で私を見てるの…?
憎んでる?恨んでますか?

「おい、蒼依?大丈夫か?」
「あ、うん。平気」
「…」

今こうして隣にいて、
気にかけてくれるのは。


私が壱を離してあげないから。


昨日の夜、お母さんに聞いた。
『血縁…?壱君と縁を切るのは難しいんじゃないかなぁ』

なんで?
お母さんは切れたのに。
壱は切れないの…?


「もし、もしもね?」
「ん?」
振り向いた壱の顔に。
痛々しい傷。


『絆創膏、うっとーしいから引っぺがした!』
ニカッと笑ってたけど。

「絆創膏…とっちゃだめだよ。」
「もしも、絆創膏とっちゃダメなの?」
壱は笑う。

「もし、ね」
「うん。」
「…私が、嘘、ついてたら、どうする?」
「嘘?」
「…やっぱ、なんでもない」


「…やっぱ、嘘なんだ」
「え…?」


「昨日、俺のプリン食ったの!!蒼依じゃないって言ってたけど、犯人お前だろ!!」
「…は?」

あ、そういえば昨日壱パパにプリン貰ったな。
壱のだったんだ。

「それはまあ私なんだけどね」
そうじゃなくて


「ほらぁ!てめえー!弁償しろや!」
「やだし。」


もうこんな風に笑い合うことも出来なくなるんだよね。


「ふふ」
「なんだよ」
「なんもないよ」
「気味悪いやつだな」

やっぱり言えない私はずるくて卑怯者。