でも若槻は、教壇の前でうむ、と気張ったままでいっこうに俺らを帰そうとしない。

それからも、若槻はクラスにぴんと糸を張ったまま、何も言わなかった。

教室の時計を見ると、終礼が始まったのが3時だったのに、もう5時をまわっている。

そろそろトイレに行きたくなってきた。

「先生...」

俺が先生にトイレに行っていいか聞こうとすると、女子の夏菜が手を挙げた。


「ん?なんだ、夏菜。」
「いや、そろそろ帰らないと。あたし、今日、塾なんです」

一瞬、夏菜が神に見えた。

夏菜が言い出すと一気にみんな、

そ〜だそーだ、帰りたい!と言い出した。

でも先生は、

「だめだ。殺人鬼が分かるまで教室から出すことは出来ない」