君の星、僕の星

「明日は卒業式かぁ」


松田先生が天井を見上げてぽつりと言う。


「俺、招待されてんだよね。見においでって」

「うん。知ってる」

「未央あれ読むの?卒業生代表の答辞」

「読まないよ。B組の真山くんが読むの」


ふぅん、と言ったきり
先生はしばらく黙った。


いつの間にか部屋の中が暗い。
目を凝らしても彼の表情がよく見えないほど日が傾いていた。



「……大人になるって楽しいぞ。未央」



ベッドの上の先生を振り返る。


「いろんな人と出会って、別れて。また知り合ってさ。全部これからだもんな。大学もきっと楽しいよ」


松田先生は、教員採用試験に見事合格し
大学卒業と同時に教師になる事が決まったばかりだ。

ここから遠く遠く離れた、私の知らない町で。

そして私も、高校の推薦制度によって大学への進学が既に決定していた。
もうすぐ住み慣れたこの町を出て行く。



「…………うん」



私が大人になる過程。
私の『これから』に、先生は自分の姿を描いていない。

私も、彼の姿を描いていない。


今後の話が出ないのは
私たち二人にそんなものはないから。


離れたら解消される、宙ぶらりんな関係だからだ。