両手を広げた本間新吾は、

「その車椅子の女、秀島さやかだろ」

と言った。

「単なる人違いでございますよ」

「マスクを外せ!」

つかみかかろうとした。

そこにホテルのドアマンが、

「…お客様、落ち着いてください!」

トラブルを察したのか、本間新吾を取り押さえた。

「さ、タクシーがお待ちですよ」

駿は車椅子を押して走った。

本間新吾とドアマンが取っ組み合いになっている。

タクシーのドアが開いた。

「よろしくお願いします」

タクシーに車椅子は吸い込まれる。

ドアが閉まる。

ようやく本間新吾はドアマンを振り払った。