しかし。

予想外の事態が起きた。

本間新吾は会場に入るや、なぜか関係者席の一番前に座ったのである。

気づいたのはホテルのスタッフで、

「すみません恐れ入ります、そちらは関係者の席なのでご遠慮いただけますか」

と声かけをしたのだが、

「俺は関係者だ」

言い張って譲らない。

仕方なく駿が出た。

「これは本間様、ご足労をおかけ致します」

「誰だお前」

「社長室付秘書室室長、伊福部と申します」

「なんだ秘書か」

不機嫌そのものである。

「そちらは執行役員の席でございまして、お身内の特別席は別にご用意してございます」

「俺はここがいいんだ」

「そうでございますか。それならお別れの会は中止と致します」

「…ずいぶん大胆だな」

「なにぶん席次の厳守が、ホテル側からの通達でございまして」

「仮に守らなかったら?」

「席次を守らない人物が出た場合、会を中止した上で、席次を守らなかった方に後日すべて損害を司法を通じてご請求させていただくことになっております」

「…ちっ、めんどくせぇなぁ」

しぶしぶ本間新吾は立った。