しかし、と彼女は言う。 「でも今はこの会社は東京が本社で、だから山形とは縁が切れているのではないか」 駿は譲らない。 「そういう不義理を日本の社会では嫌います」 「…そうか」 不承不承ながら、納得したようである。 「ではこれにて」 退出しようとした。 「伊福部室長、待って」 「はい」 向き直った。 「あなたが例の新しい秘書室長ね」 「…それが、何か」 「なかなかのハンサムじゃない、まぁ気に入ったから合格」 何が合格なのか、退出したあとに駿は考えてみたが、皆目わからないままであった。