雨宿りしていたそのビルの中に、ぐいぐいと連れていかれた。

エレベーターに乗る。

光君は、”12階”のボタンを押す。

―――クシャンッ

くしゃみ、ひとつ。
鼻をすする私。

光君は来ていたコートを脱いで、私にかける。

『いらない』

「黙って」

ぐい、っと肩にかけられたコートから

雨の匂いと

光君の、シトラスの匂いがした。