「行ってきまーす。」
靴を履きマフラーを片手に家を出た。
はぁ、っと息を吐くと白い。今年も冬がやって来た。
冬が来たからといって特に嬉しいわけではない。
思い出があるわけでもないし、寒いのが好きという訳でもない。
何もかもが冷めきってしまう季節。
どことなく寂しさを感じる季節。
私、斉藤小向にとってはなんでもない季節だ。
そんなことを考えているといつの間にか学校に着いていた。
「小向―ー!おはよ!」
この子は私の友達の小川柚だ。高校生になったとき最初に話しかけてくれた子で
今となっては毎日一緒にいる。
元気で活発な子だけれど、まじめで人の気持ちを考えくれるとてもいい子だ。
「おはよ、柚。」
私は彼女とは正反対で、静かで落ち着いていると思う。
社交的でない為友達も少ない。クラスでも目立たない方だ。
「今日すっごく寒くない?私寒すぎてカイロ3枚も背中に貼ってるよ~笑」
「確かに今日寒いよね。ねぇ柚、今年は雪降ると思う?」
「雪か~。この街なかなか雪降らないもんね~。てか小向雪好きなの?去年もそんな話してなかった?」
「別に好きとかそいうのじゃないんだけど…。雪降ったら冬って感じするから。」
「まぁ、たしかにね~。冬が舞台のドラマとか雪いっぱい降ってるもんねー。」
キーンコーンカーンコーン____。
「おーいみんな席につけー。」
「あ、先生来た!じゃまたあとでね小向!」
私はまたねっと柚に言ったあとふと廊下の方に目を向けた。
そこには見慣れない制服の男の子が一人立っていた。