続*おやすみを言う前に


「違うん?」

「違わない、けど。」


麻衣子は顔を伏せるとお守りを鞄にしまった。

なんやねん、ほんま。時々あざとく上目遣いしてきたりするくせに、たまにこうやって天然で翻弄してきたりもする。

心を鷲掴みされてるって、こういうことなんやろな。


「うわあ、何か私恥ずかしいことした。」


目を合わせない麻衣子の手を握る。もう何百回と繋いできた左手がとてもしっくりくる。


「何でや、めっちゃ嬉しいよ。まさか麻衣子からそんなこと言ってもらえるとはなー。旅行マジックやん。」

「ほんとに?」

「ほんまに嬉しい。ただ二人の時に言うてくれたらもっとよかったな。」

「なんで?ただお守り買ってきただけなのに。」

「今めっちゃ抱きしめたいの我慢してんねん、人前やから。」


指先に力を込めると、同じように返してくれた。

この一回り小さな手をずっと握っていたい。隣を歩く細い肩を守っていくことを、誰にも渡したくない。

気温はどんどん上昇してゆく。旅行はまだ始まったばかりだ。