「た、拓馬!」

「顔洗ってくる。」


エロいたずらが成功したので、怒られる前にキッチンを離れた。

最近、正確に言うと三週間程前のあの夜から、麻衣子にふれたい欲求が膨らんで止まない。

それまで我慢していたこともあるが、たぶんほんの少し、倦怠期まではいかずともマンネリするような気持ちがあったのだろう。気付かなかったけれど。

いろんなことがクリアになって、単に性欲を掻き立てられるだけではなく、ふれることによって得られる幸福感や快楽が増えた。

麻衣子の体温を感じることが、たまらなく愛おしい。


「いってきます。」

「いってらっしゃい。」


玄関先でキスをしてから家を出る。

今日麻衣子は授業がないので、お弁当を作ってくれた。いってきますのキスといい愛妻弁当といい、戸籍上は違うだけでほぼ新婚生活みたいだ。

何十年後もこのままおれたらええな。とか夢見てしまうのは、二十八にしてはちょっと痛いやろか。