気付くと、私たちは赤い屋根の上にいた。
結構な傾斜だ!それまでなんともなかったのに、急に足がずり落ちる。


「わっうわっ!」


右足に力を入れ、踏ん張ってみる。なんとか踏み止まっているけど……。


この両手をなんとかしてつけないかな?
しゃがむのも難しい。落ちないよう、そっと腰を落としていく。


「お嬢様」


青が手を差し伸べてくれた。私は青の手を借り、一番上のところに座った。


「とんでもないところに来たよー」


私は白旗を取り出し、ちょっと弱気な言葉をこぼした。


「ぎゃっ!」


私は右手をつきながら間一髪で腰を上げた。
空操禁書の攻撃だ!


「ここから離れましょう!」


仄矢と南天さんが屋根の上を駆ける。


「えっちょっと待って!」


私は手を伸ばし、涙声で引き止めようとした。この傾斜で走るのは無理だ!絶対に転げ落ちる!


「騙されたと思って飛んでみてください!」


私の不安を笑うかのように、仄矢は弾幕を張りながら言った。
私を見るときコートを翻した仄矢は、笑っていた。


このままじゃ直撃する!私は意を決して屋根から飛び降りた。
白旗がはためくのが見える。それで何故か力が抜けて、両腕を広げた。


クルンと一回転し、足を地面に向ける。
不思議なことに、着地しても、足に伝わってきた衝撃は、家の段差から飛び降りたくらいだった。


こういうことか!足を曲げてから大きく飛ぶと、窓の高さまできた。
もっと上に行きたいと思うと、体は本当に昇っていく。


空操禁書の真後ろにいきたい。
そう思えば体は空操禁書の方に引っ張られる。けど、気持ち悪くはなかった。


電車に乗っているとき、揺れて引っ張られるのとはまた違うんだ。


私が後ろに来ても、仄矢の攻撃に気を取られて何もしてこない。


「ただの人間の攻撃は効かないよ!」


空操禁書が南天さんの攻撃を弾き、挑発する。
私は南天さんが相手をしている空操禁書に向かい、旗を振り下ろした。


白い光の粒が空操禁書に降り注ぐ。


すると、南天さんの刀が空操禁書の肩を切り裂いた。