「では主様は何を食します?ストックの人間は今夜のもので最後で…」

「あのね、人間が人間を食べると思うの?その“設定”がまずおかしい」

「はあ…そうは言われましても、主様のお腹すいたなんて発言は普段から聞いたこともありませんし…人の食するものなど存じ上げませんが」

「…」


静かな口調で申したものの、黙り込んでしまった主様の様子にやってしまったと心の中でため息をつく

メイドごっこの“設定”には人間の食事に関する知識が必要不可欠なんだなと学びつつ


「拗ねないでください」

「拗ねてない」


明らかにムス、とした声色の主様

面倒臭い

心の中の悪態は勿論音に響かせるなんて死亡フラグを自分で立てたりはしない


「ですが主様、私は事実を申しただけなんですが」

「だから拗ねてないって言ってるだろう」


ツン、としながらよくもまあそんなことが言えたものだ

こっちは口調も姿形も変えて付き合っているというのに


「では何か作ってみますのでリクエストなどありますか?」

「…す」

「はい?」

「オムライス…」


ポツリと落とされた名前は多分、リクエストの食べ物の名前なのだろう


「かしこまりました」


丁寧に頭を下げ、これ以上の波風はたてまいと踵を返すと「杞憂」と主様の静かな声が私の足を止めた