暗闇の廊下を進みながら主様の声が響く
低すぎず高すぎず、耳に残る響きは正直嫌いだ
「はい」
「きーゆう」
「だから、はいと返事をしております」
「杞憂杞憂杞憂」
「今日は一体どんな虐めですか?」
「ふふっ」
主様は理解に苦しむ言動が多い
元々人間を理解しようなんて無理だとは思っている
それでも主様は人間の中でもとことん理解に苦しむ人間だと思う
「今日のご飯は何?」
書斎に入り、机の前に座る
一連の動作で勿論、机や本棚にぶつかる事もなく、明かりが灯ったことのない真っ暗闇の部屋でひっそりと静かに椅子に座るのだ
僕はこの家の色合いを知らない
「人間の心臓を照り焼きにしてみました」
「冗談が上手くなったね」
「…」
「ちょっと無言になるのやめてくれる?まさか本当に…」
「私が美味しくいただきます」
「そうしてくれ」
やった。ご馳走だ
そんな心の歓喜を悟られないように一人称に気をつけて淡々と話す
