「主様、夜中の2時ですが。さっさと起きて仕事してください。」


真っ暗闇の部屋の中

僕の声だけが落ちる

気配もなく、人影を写す光もない

カーテンは締め切られ、果てない闇が広がる空間

どこまで伸びているのかわからない暗闇でゆったりと起き上がる人が動く音だけがする


「主様、起きられましたか?」

「…」

「返事くらいしていただきたいものですね。私はあなたの召使でもなんでもないんですが。使い魔をこのようなことに使うなどほとほと嫌味がつきません」

「…」

「起きろと言ってるんですよ。聞こえてますか?これだから人間は。食事、睡眠、適度な運動に休息?それらを適度にこなさないと生きられないなんてなんと脆弱でしょうか」


淡々と落とすのは嫌味と蔑みの言葉

闇夜にストンと響く声音は僕のものである

無感情に淡々と落としてやるのは聞こえていないうちの特権

この時ばかりは言いたいことを言いたいだけ言えるので遠慮なく口にする

そうでもしないとやってられないから

静かな闇の中、やっと気配が動きを見せる


「……夜中からよく吠えるじゃないか、杞憂(きゆう)」


機嫌が悪い?

いいや、違う

とてつもなく機嫌がいい声音はククッと密やかに喉奥を震わせる笑いとともに落とされる