わざわざ僕が使った言葉で落としてくる人間は心底意地が悪いのだと思った

同時に敵わないと悟った

今まで出会ってきた人間とは明らかに違う

それに聞いたことがある

人間の中に稀に僕たち高等な位と同じかそれ以上の魔力を有した人間が居ることを

こんな時代だ

人間とそうでないものの境界線がはっきりしていた頃は霊力と呼ばれた力

人間と僕たちの隔たりは明確であったからこそ力関係も明らかであったのに

その境界線は今や無いに等しい

霊力はいつしか魔力と呼ばれ、人間達全員がこの力を操れるようになった

その中で魔力と格段に相性がいい人間が生まれても不思議は無い

まさに目の前の男はその類なのだろう


「グルルッ」

「契約しろ」


唸って苦痛を刻まれる身体

雷の音が遠い気がする

相変わらず部屋を照らす落雷に目を細めた


「承知…した」


僕に選択の余地などなかった

了承するまでこの終わらない苦しみが続くのは目に見えている

心が完全に屈服を示していた

目の前の男に完璧に畏怖を示していた

屈辱的であるのに逆らおうとも思わなかった

僕のひと言に人間は満足そうに口元の弧を強めて僕の上から退く


「その醜い姿は変えられないのか?」