暗闇の雷雨の中、存在感のない生き物との遭遇

いつかは忘れたが、人間の作ったホラー映画とやらを見た時の光景と重なった

屋敷の中、真っ白でどう見ても生気のない人間が人間を脅かすやつ

キャアアッと叫ぶ悲鳴が耳に鮮明に記憶されている

まさにそんな現状


「おい、聞こえているのか?答えろ。性別はあるのか?無いのか?それとも理解力に乏しいのかお前は。何度も言わせるな」


口だけが達者に動くヤツだと眉根を寄せた

いちいち一言余計だ

いや、二言くらい余計だ


「…性別は特に無い」


ボソ、と不服ながらも答えていた

むしろ文献には男性の身体とか書かれていたっけ?

特別僕たち悪魔に性別なんてものは無い

いや、性別がきちんと決められた種族も居るが僕は違う

どちらでもあり、どちらでもない

僕の答えに人間は「…ふむ」と言いながら僕の周りをゆっくりと歩いた

包帯を顔半分巻いているにも関わらず、綺麗な円を描いて歩く

だから少しばかり興味が沸いて口を開いていた