どうして僕の正体を聞き流せるんだ

それなりに高等な位である自分のプライドというものはあって、ますます目の前の人間が憎たらしく思えた

けれどこれは召喚魔法

自分の感情ひとつで壊せる脆い陣ではない


「お前は馬鹿なのか?僕は七つの大罪であるぞ。富や金銭の管理者である僕が低級な種族のように心が無いわけないだろうが」


馬鹿にしてるのか?

イラつくままに、それでも声は荒げず淡々と言ったつもりだった

すると暗闇に潜んでいた人間がひっそりと笑った気がした

雷が近くで落ちて、窓から雷光が差し込んでくる

部屋の奥まで照らしてくれた雷光のおかげで人間の姿が一瞬だけ浮かび上がる

『白』

ただただ真っ白

それだけが視界で捉えた人間の姿だった

確かにそこに居るのに存在感が全く感じられない

続いて響く声に意識が戻される



「…ははっ。俺のことを馬鹿だと言ってきたのはお前が初めてだ」



声高らかな笑い声だった

耳によく響き、残ってこだまする

声質だけでこの人間は存在感を持つというのか

不思議な感覚と、どこか警戒にも似た感情が浮上する

何故だ

たかだか人間だというのに

眉根を寄せて無意識に自分の胸を押さえていたらしい手に視線を落とした