初めてではない

魔法陣の中心にいきなり引きずり込まれて人間界へと召喚されることは

僕を…僕達を研究する学者と呼ばれる人間達は多いからだ

あの日もそうだった

地獄ではもっぱらサタン様のご子息が行方不明になった事が話題になっていて、僕も聞き耳を立てていた

人間界で暮らしていたご子息が地獄に留まることも魔界に移ることもなかったそうな

何故か人間にまぎれ、人間の学校で人間として生きていたと聞く

見つけ出し、連れ帰ってくれたなら報酬をやろうと地獄の王が言うならば欲深い悪魔や魔獣達は躍起になって探すというもの

僕もその一人だった

近々、人間界へ降りようと久方ぶりにワクワクしていたものだ

そんなタイミング…急に感じたこともない魔力に引きずられて人間界へと強制召喚されたのだ

頭がぐらつくし、いつだってこっちの都合など無視した人間の召喚にはイラつくことこの上ない


その日の人間界は豪雨の夜中だった

召喚された魔法陣の中心で最初に聞こえたのが雨と落雷の音

視界にはボウッと淡く輝きを伸ばす魔法陣の錬成光

周りを見渡せば部屋の中なのだろうとわかる本棚や壁を確認してから自分の目の前に視線を向けた

僕が召喚された部屋の奥

椅子に足を組んで座り、肘掛に頬杖をついている人影だけが見えた

雷が光ってうっすらと人間の顔の半分だけが見て取れる