「……」

ふと目を開けると映画館にあるような座り心地のいい椅子に座っていた。

7枚くらいのモニターが目の前にあって今までの私が映し出されていた。

懐かしいな…私のもこんなに小さい時があったんだ…
そう思いながら見ていた。

「目覚めましたか」

後ろから扉の開く音とともに聞こえてきた声。

その声はたくましいようなどこか幼く。

私は怖くて後ろを振り向けなかった。

「怖がらなくたっていいさ。こっち向いて」

その声の持ち主は隣に座って私の顔を覗き込んできた。

私は恐る恐るその声のする方をに振り向いた。
それはどこかで見たことあるような顔だった。

「誰…?」

「あれ?俺のこと忘れた?まぁ無理はないか」

少し悲しそうな顔をして目をそらしてモニターに電源をつけた。
真っ暗だった部屋は一気に真っ白になって眩しくて目をぎゅっと閉じた。

「いまから大事な話をしなくちゃいけないんだほら。目を開けて」

私は言われるがままゆっくりと目を開けた。
さっきまで座ってたはずの座り心地のいい椅子もなくって私とその男の子は立っていた。

私はふらついてその場に座り込んだ

「あぁ、キミもか。なら少しはまだ希望はありそうだね。」

いくつかのモニターの前にして
その男の子は少し安心したような顔をして私を見下ろした。

「いまから辛い話もするけどちゃんと聞いてね」

私はその男の子をじーっと見ていた。

「…その前にあなたは誰??」

「キミは大津芹花ちゃんだね?
君はやりのこしたことはないのかい?」

そんなの…なんのこと?

その前に私はあなたが誰なのかわからなかったら
あなたの話を聞く気にもなれなかった。

「やり残したこと??」

「えっと目を閉じて」

私は俯いて目を閉じた。
頭の上がぼーっと熱くなった。

「大津芹花」

その男の子が私の名前を呼ぶと記憶が
カメラのフィルムのようにたくさんたくさん蘇ってきた。

「…うさぎくん?」

思い出した。
まだ幼いころに出会ったことがある。

「やぁ久しぶりだね12年ぶりの芹花ちゃん
キミはまたここへきてしまったようだね」

また…あぁそうだ。

私は昔幼い時に事故に遭ったことがあって
生死を彷徨ったことがあったっけ。

「うん…」

「キミはあの日に交通事故に遭ってね、死んだんだよ。
日向狐夏って名前を覚えてるかい?」

「先輩??」

「そうだよ。その人と結ばれたくないのか?」

少し強めの口調でうさぎくんはそういう。

結ばれたいよ。

諦められないよ。

誰にも譲ってもいいなんて思ったことなんてないよ。

「結ばれたい」

「じゃぁキミは戻るべきだ。いつからやり直したい?」

「え?」

「入学式?それとももっと前?いつに戻りたい。
芹花ちゃんあんたにはもう時間が30分しかないんだよ。
もう少しでいまこの世ってところで行われてるあんたの葬儀が
終わってしまうんだ早く決めろ。
俺はあんたをまた戻してやりたくって言ってるんだ。」

戻りたい時期?
そんなのわかんない。

でも唯一戻るなら…

失敗したあの日遅刻したあの時に戻りたい。

「遅刻したあの日に帰りたい」

「じゃぁその少し前に戻そう。」

うさぎくんはモニターをいじって私の記憶を操作した。

「こっち来て」

私はうさぎくんの歩く方へついていった。

真っ白のその空間。

天井の高さも、奥行きも何もわからない無重力のような部屋。